侯爵サド夫人 (文春文庫)



侯爵サド夫人 (文春文庫)
侯爵サド夫人 (文春文庫)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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面白い小説を読みたい方に

 書名からわかるように、サディズムの語源となった有名なサド侯爵の
夫人が主題となっています。

 数々のスキャンダルを起す夫を非難せずにかばい、拒食状態に陥って
いるサド侯爵婦人「ルネ」。その治療を頼まれた司祭「ピネル」は、彼
女と話をするうちに不自然さ(本来なら侯爵に対して不満を持って良い
筈なのにそんな気配を見せない)に気が付く。

 その極端に貞淑な妻の姿は偽りであり、本当の問題は強権的な母親か
ら自立できない「ルネ」自身に隠れていると判断し・・・。

 何だかとっても現代チックですが、そう、この本は舞台を昔のフラン
スにとり、登場人物も実在の人物を配しているものの、中身はまるっき
り現代ものです。

 でも、時代小説という期待で読むと裏切られたと思うでしょうが、登
場人物の心理描写(ビネル自身も心に傷がある)が優れていて面白い小
説であることは間違いないです。

 面白い小説を読みたい方にはおすすめできる本です。
心の奥に潜む狂気と孤独、そして愛憎。

過去に母の喪失を経験している助祭・ピネルはある日、自分の乳兄弟にして社交界随一の伊達男・ギベール伯爵とその愛人・レスピナス嬢の依頼により、1人の女性の精神を取り戻すために旅立った。
異端の乱行、淫行を繰り返し、当時世間の注目の的であったサド侯爵の妻・ルネ。
拒食症に陥りながらも、夫へ無償に捧げる愛情と真心を口にするルネの本当の心理を探るうちに、ピネルはサド侯爵の過去、ルネとルネの母親モントレイユ夫人の関係、そして自分自身の心のキズにも深く入り込んでいく。

中心人物にもかかわらず、この作品には一度もサド侯爵自身は登場しない。
サド侯爵は、彼を取り巻く人々の証言の中に登場するに過ぎない。
しかし登場人物ほぼ全員が、サド侯爵の陰鬱な世界に知らず知らずの内に飲み込まれていく姿が、新たに歴史の切り口と、人間の深い心の闇から追求された新たなサド侯爵の世界が、著書全体に広がっている。

藤本ひとみ先生の作品中でも秀逸な作品ですので、ファンの方はもちろん、サド侯爵に興味のある方も、前著書「サド侯爵」と合わせて読まれることをお勧めします。



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